ラーメン屋の店主が犯したたった一つの失敗についてお話しします。
新型コロナウイルスの勢いも弱まり、新規にオープンする飲食店をよく見かけるようになりました。
また、居抜きで使用できる物件も多く、飲食店に挑戦する人を後押ししているようです。
今回は、久能翔吾さん(仮名・27歳)という方の話をお聞きしました。
彼はずっと自分のお店を持ちたいと思っていましたが、最近生まれ育った北関東でラーメン店を開業しました。以前は、都内の有名なラーメン店で7年間修業を続けていたそうです。
7年間で1500万円の貯金に成功し、夢を実現させるための資金ができました。
「私は18歳で高校を卒業してから、一生懸命開店資金を貯めていました。お店を持つためには、有名店で修行するための紹介を知り合いから受け、そのお店でしっかりと修業をしました。お店が休みの日は運送業などのアルバイトもして、彼女も作らずに貯金に専念しました。結果として、7年で1500万円の貯金を達成し、自分のお店を持つための資金ができました」
久能さんは最初、都内でお店をオープンすることも考えていましたが、新型コロナウイルスの影響で飲食業界が低迷期に入ってしまいました。修行していたお店も休業が多くなり、資金繰りに苦しむ現状を目の当たりにしました。
そのため、自分のお店を持つ際にはコストパフォーマンスの良い物件を選ぶことに徹底的に取り組むことを決めました。「味はもちろん大切ですが、成功の鍵はどれだけ多くの人が行き交う場所にお店を構えるかです。
しかし、都心の繁華街やテナントは賃料が高く、固定費も非常に高額になってしまいます。そこで、固定費を少しでも削減する計画を立てることを考えました。
久能さんは2022年の夏にお店をオープンしました。
この時期は徐々にコロナ禍が収束し始めていたため、飲食店を新規にオープンさせるのに絶好のタイミングだったそうです。
「全国的にコロナの影響で閉店した飲食店が多くなり、特にラーメン店はたくさん潰れていたんです。そのため、繁華街でも安くて良さそうな物件がたくさんあり、中にはラーメン店に適している居抜き物件もいくつか見つかりました。その中でも、つい数ヶ月前までラーメン店が営業していた居抜き物件を見つけました。内装や厨房機器などもそのまま使ってもよいという好条件だったんです」
このような物件を見つけたことで、久能さんは予想よりも安い資金でお店を始めることができたそうです。
しかも、その物件は繁華街に位置しており、人通りも回復していました。
しかし、思わぬ問題に直面することになりました。それは害虫の存在でした。
「飲食店を経営する上では、ゴキブリやネズミなどの害虫の問題は避けて通れません。自分たちも、開店前には害虫駆除の専門業者に依頼して対策を行いました。しかし、夏だったこともあり、ゴキブリやコバエなどが調理場で頻繁に発生してしまいました。また、繁華街だったため、他の飲食店から逃げてきたネズミにも悩まされました。結果的に、害虫駆除にはかなりの費用をかけることになりました」
さらに、飲食店としては最悪の「事件」も発生してしまったようです。
「営業中にゴキブリを見たというお客さんが出てしまったのです。場所は飲食スペースではありませんでしたが、トイレでゴキブリを目撃したため、気持ち悪さから食事をせずにそのまま帰ってしまったんです……。その影響で、来店者数も徐々に減っていきました。小さな繁華街なので、噂はすぐに広まるんですよ」
と久能さんは悔しそうに話します。
八百屋さんの仕入先でも、『ゴキブリが出たという噂が広まっているけど、問題ないか心配だ』という声が寄せられ、噂が広がっていることを実感しました。
そこで私は悩みましたが、開業時に頼んだ害虫駆除業者に相談しました。
お店自体が古いこともあり、完全に害虫を駆除するには相当なリフォームが必要だと言われました。
開店したばかりで資金を使いたくなかったのですが、仕方がありませんでしたので、リフォームも検討していました。しかし、その頃には原料費や電気代の値上げなども重なり、資金繰りがかなり苦しくなってきました。
このままでは悪評もついてしまい、頑張っても数年後には資金が底をついてしまうかもしれませんでした。
まだ余裕があるうちに撤退することにしました。
1年も経たないうちにお店を閉めました。それからは、修行先に戻って働いています。
現在は、体制を立て直すために、以前修行していた場所で雇ってもらっています。
安くて手軽な物件でお店をオープンしたのは間違いでした。原料費や光熱費の問題もありますが、害虫に十分に気を配れなかった自分自身が悪いのです。
今は少しの資金が残っているので、再び夢を叶えるために心を入れ替えて修行しています。
さまざまな要因で厳しい経営を続けなければならない飲食業界では、害虫という天敵とも戦わなければなりません。ゴキブリやネズミなどを完全に駆除することはできないため、飲食店を経営する人々には永遠の課題となるでしょう。
■>>>>>この記事は日刊SPAに掲載されたものを簡潔にまとめたものです